第三の島国

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海を挟んで向かい合う二つの国。 永らく、この二ヶ国は海に浮かぶ小さな無人島の領有権を巡って争っていた。 この島は二国間の丁度中間に位置しているのだ。 辺境とも思えるこの国だが、実はその地下に豊富な資源があった。 二つの国は資源が乏しく、何とかしてその周辺海域を経済水域に入れようと躍起になっていたのだった。 ある日、大型ヘリコプター数機がこの島に着陸した。 中から現われた軍隊と政治家の一団、たった数時間でプレハブ小屋を建て、その屋上に国旗を翻した。 二国の軍は、その知らせに耳を疑った――どちらの国の所有でもない、第三者だったのだ。 島の人間の掲げた旗は、海に浮かぶその島を描いたものだった。 ここに降り立った人々は、即日で全世界に国家独立の宣言を言い渡した。 二国は当然ながらこれに猛反発した。 が、それ以外の国は、例外なく独立を承認、直ちに国連もこれを認めた。 何しろ、国際的な視点では、その島の周辺はどこの国にも帰属しない、未確定領土という空白地帯だったのだから。 独立したその国の領土は二国間の中間地点となる群島全てを含んでいた。 国境線はその国家の経済水域によって両国とも大幅に自国に近づいていた。 二国は束になって他の国に抗議をしたが、島の政府は既に根回しをしており――つまり、資源の斡旋で他の国を味方に引き込んでいたので――徒労に終わった。 その間にも、政府合同庁舎は立派な鉄筋コンクリートのビルとなり、新たに来た民達によって農耕や漁業が発達、独力で国家の維持を成し遂げた。 結局、地下資源を得たのは二国のどちらでもない、余所から来た第三者だった。 世界最大規模の資源の源を持つその島国は、一気呵成に国力を増し、二国にとっては今や雲のうえの存在となっていった。 最早、二国とも地下資源を採る事が許されない。 二国はこれまでの対立を嘆いたが、最早遅かった。 意地を張らず、その島を国境として二国間の共同統治とすれば、或いはよそ者に取られずに済んだのかもしれない。 しかし、島の民は実のところよそ者ではなかった。 島の全員が、第三国に移住した、この二国の民の間に生まれたハーフだったのだから。
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