ウサギでピエロ

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その時、廊下に出ていた演劇部員がわたしたちの頭の向こうを見て声をあげた。 「あ~!戻ってきた!哲さーん!」 わたしたちは、振り返る。すると廊下の向こうから走ってくるのは…あのピンクのウサギだった。とはいえ、頭を外し、着ぐるみも上半身を脱いで腰のあたりで丸めている。 ボサボサの黒い髪。ウサギの着ぐるみからは想像もつかない、ごつごつと骨張った体。サトルと呼ばれるその男の人は汗だくわたしたちの横を通り抜け、教室へ入っていった。 「哲!どこいってたのよ!」  しかめっつらの女神が食ってかかる。 「どこって…チケット配りだよ。…しっかし、やっぱ着ぐるみはあっちーわ。サッカー部のやつらにはもみくちゃにされるし、もー…」 「そんなの役のない子に任せればいいでしょ!あんたは…」 ドサッ 「悪い、美咲!俺、準備あるから!な!ほら、急がないと!」 ウサギの彼は、着ぐるみの頭を女神に渡すと、笑顔でカーテンの引かれた舞台裏へ入っていった。 「…ったく!もう、、」 女神は、ウサギの頭を細い腕に抱え込み、呆れた表情。そのまま、自分も、カーテンの向こうへ消えていった。
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