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「びっくりしたー。彩ってば泣いてるんだもん。」
終演後、隣で千早が呆れた声をあげる。どこに泣きどころがあったんだ…と。
「…いやぁー…」
わたしは、上手い言葉が見つからず、ただただ苦笑い。話をそらそうと、配られたアンケート用紙に視線を落とす。
「…あ…、あのピエロ…ウサギの人だったんだ。」
キャスト欄に名前が書いてある。
【ピエロ…マツミヤ サトル】
「ほんとだー、サトルって呼ばれてたもんね。」
千早もアンケート用紙を覗きこみうなずく。
「はーい、お帰りの方はアンケート書いてってねー!」
突然入口の方から、大きな声が聞こえる。
「ご意見、ご感想、愛の告白、なんでもオッケー!」
声の主は、まさに噂のピエロ。カツラも衣装もとっているのに、メイクはそのままだ。さっきの着ぐるみといい…なんてまぬけな格好。
そんなピエロに、三人の女子生徒が近づいていく。
「すっごいカッコよかったです~!松宮先輩!」
…カッコよかった?あのピエロが?わたしは首をひねる。
「ああ~どうもどうも~ありがとう~」
ピエロは、へらへらと答える。
「あのぉ、わたしたち二年なんですけどぉ、今からでも入部できますかぁ?」 三人の中で、一番派手目な女の子が、ピエロに擦り寄り上目遣いで尋ねる。ピエロはへらへらとした顔のまま一歩うしろに下がり、
「ふーん…」
女の子を頭の先から爪先まで見渡す。女の子はまんざらでもない様子。
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