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「裏方志望?演者志望?うちで何したい?尊敬する役者っている?好きな芝居は?映画でもいいやっ」
ピエロは真顔で女の子に次々と質問していく。
「…えっ…あのっ…えっと…」
今度は女の子が、一歩二歩と後ずさっていく。
「んー、ヒロインって感じじゃないよねぇ。どんな役やりたいのー?」
最後の質問に女の子の表情が引きつった。そして強い語気で、
「考えなおします!」
そう言い放つと、くるりと向きを変え行ってしまった。あとの二人も、それを追いかける。
「哲~お前なぁ~…」
他の演劇部員がそう言いながら、「頭が痛い」というようなポーズをとってみせた。
「”ヒロインって感じじゃない!”は、いくらなんでも失礼だろーが!わりと可愛い子だったじゃんか。」
「えー!俺、別に顔のこと言ったわけじゃないもーん。それに顔可愛い子なんて、その辺ごろごろいるじゃーん。」
ピエロは、頬をふくらませおどけてみせる。
「それに、あんな質問攻めにしたって、なんとなく入部したいって子だっているだろー。」
演劇部員はそう言うと、ため息をついた。
「…なんとなく…ねぇ。でも少なくとも芝居がすきってのは大事じゃない?」
ピエロはまた、真面目な顔で言う。
「俺の今日の役、お世辞にもカッコイイとは言えないと思うんだけど。そう演じたつもりもないし。
結局、役じゃなくてメイクも衣装も脱いだ俺の顔目当てで来てんだろー。そういう奴は、そのまんま観る側にいた方が幸せだよ。」
「なんだそりゃ、遠回しに自分の顔はカッコイイって言ってんのか?」
演劇部員が苦笑する。
「ええ、勿論。ボクは我が部で一番のイケメンアクターですから。」
ピエロは舌をだし、またおどけて見せた。
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