ウサギでピエロ

12/13
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
 その一部始終を見ている間に、わたしたち以外の観客はほとんどアンケートを書き終わり、教室を出てしまっていた。千早も、あと少しで書き終わるようだ。 「彩~書けた~?」 アンケート用紙を折りたたみながら、千早が聞く。 「わ~ごめん!ちょ、ちょっと待って!」  わたしは慌てて鉛筆を走らせる。 その時、うしろから声をかけられた。 「すみませーん、片付けたいんで一旦、外に出てもらえますかー。」 ガタガタと椅子を片していく男の子。 「あ、はーい。ほら、行こ、彩!」 千早がわたしの腕を引く。わたしはすぐに立ち上がれない。 ガタッ 急に男の子が抱えていた椅子が床に落ちる。な…なに?わたしは音の方を振り返る。 「…みつけた!」 男の子が目を見開いて千早を見ていた。千早はきょとんとした顔。 「君!ピッタリだよ!うん!ピッタリだ!最っ高だよ!」 興奮気味に男の子がまくしたてる…が、何が言いたいのかさっぱりわかんない。引き気味の千早、とわたし。 そして、突然、ガシッと千早の腕を掴むと、つかつかと教室の外に連れ出していく。取り残されたわたしも急いで追いかける。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!