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「哲さ~ん!みつけた~!」
男の子は、そう言いながら千早をピエロのところまで連れていく。
「ん~なんだよ?永太郎。」
ピエロと並ぶと男の子は随分と小さい。
「なにって!こないだ言ってた脚本の!ヒロイン!」
男の子は片手で千早の腕を掴んだまま、もう一方の指で千早を指さす。
その瞬間、千早がキレた。
「なんなのよ!もう!」
男の子の腕を振りほどき、千早が怒鳴る。
「いきなり意味わかんない!触らないで!指ささないで!すごく失礼!…行こっ彩!」
千早は、そのままつかつかと廊下を歩いていく。
「「ちょ、ちょっと!待って…!」」
男の子とわたしの声が重なる。
「…ふ…ぶはっ」ピエロが吹き出した。
わたしは、自分の顔が赤くなるのがわかる。急いで、持っていたアンケート用紙を小さく折りたたみピエロに渡すと、千早の後を追いかけた。
背中に、ピエロの楽しげな笑い声を聞きながら。
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