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翌朝、わたしのもとへと歩いてくる千早の顔は、不機嫌そのものだった。
「もー!なんなの?あいつは?!」
あいつ…そう、昨日、千早を探していた男、堺英太郎は宣言通り、あのあと千早を勧誘に体育館へ押し入ったらしい。
「いきなり来たかと思うと、一直線にわたしの前にきて、アレだよ!アレ!んーと…土下座!超ー恥ずかしかった!」
千早は呆れた顔で続ける。
「先輩とかが、なんとか外に引きずり出してくれたけど、そしたら今度は入口で終わるの待ってんの!しかもガン見!」
その後、逃げようとするも、まんまと捕まり、懇々と演劇部への入部を迫られたらしい。話を聞きながら、わたしは苦笑いを浮かべる。
「…ごめんね、千早がバスケ部にいるってバラして。ごまかせば良かったね。」
弱々しくわたしが言うと、千早は鼻息も荒く、こう返した。
「あれは、彩が教えなくても絶対みつけて来てたわよ!地の果てまでも追いかける!って感じ。
しかも、何人かの先輩には”調子のってる”とか、わけわかんないこと言われるし、ほんっと!迷惑!」
その時、一限目の予鈴が鳴る。
「で、今日、昼休みに演劇部の部長に会って決着つけるって話になったから!彩も着いてきて!ね!」
千早は、早口で言うとバタバタと自分の席へと戻って行く。
「…え?ちょ、ちょっと!千早!」
わたしは思わず立ち上がる。
「もう、きっっぱり断ってやる!」
わたしの声が聞こえたのか、聞こえてないのか、千早はそう宣言し、行ってしまった。
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