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窓の外には、満開の桜。まるでピンクの煙りに包まれたみたいだ。
高校生になったばかりのわたしは、どこか浮足立った気持ちで、校舎内を歩いていた。
隣には、友人の花本千早(ちはや)。唯一、同じ中学からの同級生。
千早と一緒の高校に進学すると知った時は、正直、驚いた。 中学時代、クラスは違ったけれど、彼女のことはよく知っていた。わたしだけじゃない、多分、あの中学の子はみんなそうなんじゃないかな。
生まれつき薄茶色の髪の毛と端正な顔立ちは、それだけで目をひいた。中学に入るまではアメリカにいたとかで、英語はペラペラ。卒業したらアメリカンスクールに進学するんじゃ、なんて噂もあった。
けど、そういうのを、鼻にかけるわけでもなく、彼女はとてもうまく周囲に馴染んでいた。男子、女子問わず、彼女の周りにはいつも沢山の人がいた。
かたや、わたしはと言えば、いたって普通の冴えない女子中学生。千早とはまったく違う地味ーな世界で暮らしていた。
けれど卒業間際、千早に廊下で呼び止められ、わたしたちの関係は一変した。
「眞中彩ちゃんでしょ?
高校、K高だよね?
わたしもなんだ。」
突然の展開に、目を白黒させるわたしに彼女は次々と話しかけてきた。驚きと緊張で、わたしは、その時に話した内容をほとんど覚えていない。
ただ、最後に彼女はわたしに自分の携帯とメールアドレスを書いたメモを渡し、笑顔で去っていった。
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