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高校に入ると、やっぱり千早は目立った。
それに便乗して、わたしも…とうまくはいかず、むしろ比較されて、千早の隣にいる地味な子として認識されていた。
お祝いはたいたストレートパーマも、コンタクトレンズも虚しい努力だったな…。
とはいえ、千早の隣で過ごす生活は悪くない。わたしを卑屈にさせないだけの気楽さがそこにはあったし、元来、マイペースな性格が好を奏してか、自分は自分、と割り切っていられた。
千早曰く、そこがわたしの良い所、らしい。
入学式から一週間がたった今日は、新入生歓迎会。
教室や講堂では、二、三年生があらゆるイベントを催している。ちょっとした学祭みたいなものだ。
目的の多くが、部活や同好会への勧誘。新入生は歩いているだけで、わいわいと声をかけられる。
千早とわたしは、人混みを縫うように、当てもなく廊下を歩いていた。ポケットには勧誘された部活のチラシやチケットが無数に折り畳まれ詰まっている。
「彩~、どっかいいとこあった?
てゆうか、部活やんの?」
やっと人混みを抜け、自販機で飲み物を買いながら千早が言う。
「…うーん…」
わたしは迷っていた。
もともと絵が好きで、高校では美術部に入るつもりだった。
なので見学にもいってみたけど、何か違う。
まず絵筆とパレットを持っている人がいない。みんなペンとインクでメイドや、戦隊物、いわゆる漫画を描いていた。
「千早は?」
他にピンとくる所もなかったし、わたしは千早に聞き返した。
「うーん、気になるのはバスケ部かなー、でも日本って上下関係厳しそー」
千早は肩をすくめる。
わたしたちは階段の踊り場まで行くと、しゃがみこみ紙パックのコーヒーを飲んだ。
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