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「ははっ!何あんた!さいっこー!」
千早は涙をぬぐいながら笑い続けている。ウサギはその場でくるりと一回転し、足を組むと紳士のようにおじぎをした。声は出さない。
そして、着ているベストのポケットからチケットを二枚取り出すと、わたしたちに差し出した。
「…演劇部…?」
チケットには、演劇部という文字。一日の公演の題名と、タイムスケジュールが書かれている。ウサギは、わたしの手から、校内の案内図をとりあげると3階の片隅の教室を指差した。
「ここでやるってこと?」
ウサギは大袈裟なくらい何度も頷くと、今度は赤ペンを取り出し、チケットの15時からの公演の所にハートマークをつけた。そしてわたしたちの頬に交互にキスするような仕種をして見せ、そのまま手をふり行ってしまった。
「…なんだったの…?」
あっという間のことに、わたしたちはまた唖然とし、顔を見合わせるとまた大きな声で笑った。
ひとしきり笑うと、千早が言った。
「行ってみよっか。どうせ暇なんだし。」
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