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案内図を見ながら、演劇部の教室に着いてみると、ちょうど前の公演が終わり観客の入れ替えが行われているところだった。
入口には「多目的室」とかかっている。普通の教室の約二倍ほどの広さ。
「ヒロインの人、超キレイだったねー!」
「ほんとー!三年生かな?大人っぽいよねー。」
多目的室から出てくる生徒たちが口々に噂をしている。
覗いてみると、中には人だかりができていた。その輪の中に純白のドレスを着た女の人が見える。
「最高でしたよ!美咲さん!」
「もうすっごい感動!泣いちゃってる子いましたよー!」
そんな賞賛の言葉を浴びながら、彼女は柔らかく微笑む。それはまさに女神の微笑み、とでも言うべきか。本当に綺麗。
けれど、突然はっと思い出したように女神は凛と引き締まった表情になる。
「哲(さとる)は?戻ってきた?」
スタッフらしき生徒に詰め寄り、尋ねる。
「それがまだなんですよー!まずいですよねー…メイクも衣装もあるのに…もう次のお客来ちゃいますよー!」
「…ったく、もう…」
女神が今度は、しかめっ面をしてみせる。
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