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「ジャンヌ、」
なあに、と少女は笑う。
金糸がふわりと揺れた。
「約束しよう」
少年はジャンヌに小指を差し出した。子ども独特の、柔らかな肉感のふっくらした小さな指。
ジャンヌは微かに訝りながら、自らの小指をそれに絡める。
「ねぇ、ルネ。どういうこと?」
ジャンヌの問いかけにルネはくすくすと笑う。
甘ったるい、柔かい声だった。
「僕ってさ、神様の声が見えちゃうからさ」
なんて、にやりと笑った。
どうしてそれが、嘘じゃないなんて見破れただろうね。
後に、彼女は本物の神の声を聞く。そうすれば、アカシック・レコードも垣間見るに違いない。
ルネは楽しげにもう一度笑った。
「ルネって、いつもそれだね?」
ジャンヌもつられるように頬を緩ませて空を仰いだ。
ねぇ、なんて。
野暮に声なんかかけない。
「もし、神様なんかが居たとして!」
「僕とジャンヌは結婚出来ますか?」
「違うよ」
「即答しなくっても良いじゃないか」
ジャンヌの素早い返答に唇を尖らせて拗ねるふりをして、ルネも青空を仰いだ。
アカシック図書館はまだ、開かない。
「ごめんごめん。わたしとルネがいつまで居られるか」
「ジャンヌってさ、毎度同じことしか言わないね」
例えば、例えば。
なんて笑うんだ。だって君は自分のレコードすら読めない。
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