15人が本棚に入れています
本棚に追加
その人は女性で、腰から下に黒く長い布を巻き付けており、胸元も同じ様な布で隠してあった。因みに背中は丸見えだ。
「あ、もしかして新しい人?」
女性が明るい声を出すと、リンドウは軽くそちらに顔を向けて言う。
「あー、今厳しい規律叩き込んでる所だからあっち行ってなさいサクヤ君」
「了解です、上官殿」
冗談っぽく言って、女性はニールに向けて優しそうに微笑みながら軽く手を振り、出口に向かった。
「とまぁ、そういう訳で、だ」
リンドウは軽く頭をかき、本題に入った。
「早速お前には実戦に出てもらうが、今回の緒戦の任務には俺も同行する。……っと時間だ。行くぞ」
いよいよ実戦だ。ニールは気を引き締め、頷いた。
旧市街地とは、文字通りかつて人が住んでたが、今ではアラガミに喰い荒らされてただの廃墟と化してる所だ。
そんな場所に、ニールとリンドウは神機を携えてやってきていた。
「ここも随分荒れちまったなぁ」
赤黒いチェーンソーに見える神機を肩で担ぎ、廃墟を眺めながらリンドウが一人感慨めいた呟きを漏らした後、彼はこちらを見た。
「おい新入り、実地演習を始めるぞ」
その顔は、先程冗談しか言ってなかった男の顔では無かった。
「命令は三つ。
死ぬな。
死にそうになったら逃げろ。
そんで、隠れろ。
運が良ければ不意をついてぶっ殺せ。
……あ、これじゃ四つか?」
リンドウは軽く肩を竦めて、纏めた。
「ま、とにかく生き延びろ。それさえ守れば、後は万事どうにでもなる」
その言葉に、ニールは頷いて答える。実にシンプルで分かりやすい命令だ。
「さーて、おっぱじめるか!」
最初のコメントを投稿しよう!