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ジュオワアアアアアアアアアアア
「……うおっ!」
ぼーっとしていた俺は、目の前の蟹鍋が沸騰して吹きこぼれる音で我に返った。急いで簡易ガスコンロの電源を切る。するとさっきまで煮え立っていた鍋が嘘のように静まり返った。
俺はどうもさっきからぼーっとしていることが多い。
夜食の蟹鍋を作る際も、蟹をさばいてるときに包丁で指を少し切ってしまうし。冷蔵庫から白菜と間違えてレタスを取り出したり……と、普段の俺にはありえないような失敗をしてしまっていた。
「どうしたことかね…。」
悩んでいるように見えるが、考えるまでもなく原因は分かっていた。瑠璃の釈然としない態度が気になっていたのだ。
会って間もないというのに、何故か俺は彼女のちょっとした態度の変化や言動などで瑠璃の心情の変化が手に取るように理解できた。
おそらく瑠璃は俺が家に来るのを拒んでいた。まぁ、何か見られちゃまずい家庭の事情とかでもあるのだろう。他人の家のことをとやかく言うのはどうかと思うので、俺が気にする必要もないのだが…。
「…やっぱり。俺は彼女のことが”気になって仕方がない”んだ。」
理由は分からないが、それだけは分かる。俺はこのまま妙な気持ちのまま週末を迎えることとなった。
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