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手を引いてベッドまで歩く。
「うわ一…」とか「カッコ悪い…最悪だ」とか言っているのは全部無視した。
ベッドに潜り込むなり抱き着かれた。
『ちょ一,どうしたの?』
「ううん,何でも」
鼻声だな一…泣いたせいか。
『何かあってるくせに。』
素直じゃないそいつを,ぎゅっと抱きしめてあげる。
それしかできないから。
「雪には言えない。ごめんね。てかさ,誰にも言えない」
声にすっかり元気はない。
『…コンサートの後。何かあったでしょ。バレバレだからさ。毎回だし』
「ううん。平気。だから一緒に…」
『寝るよ』
咲真の言おうとしたことを取り上げる。
話してくれそうもない。
このもどかしさはきっと咲真も感じているだろう。
わたしは何も自分自身について語らないから。
今はただお互いを支えるようにして眠るだけ。
規則的な寝息が聞こえるまでずっと抱きしめていた。
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