『それは(きっと)デート』

17/31
前へ
/340ページ
次へ
「……沙奈?」 「やっぱり、生徒会長のようだ。 こんなところで何をやっているんだ」 俺は「こっちのセリフだ」と、加賀谷 沙奈(かがや さな)に突っ込む。 沙奈は、桜坂学園生徒会の書記だ。 長い黒髪、それにダルそうな黒の目が、外見的に唯一あげられる特徴かな。 ミステリアスで掴み所の無いヤツで、彼氏共々、なかなか生徒会に顔を出さない。 こんな沙奈の彼氏ってのは……まあ、今はいいか。 「沙奈はバイト?」 「いやなに、単に人を驚かせたくなっただけだ。 飽きたから今日で辞める」 ははは……まあ、常人に理解できない奇行は、今に始まったことじゃあない。 「それより、イヴァレンスを追いかけなくていいのか? ここは客が走ることを想定して作られてはいるが、なかなかに危険だと思うぞ」 「……そうだね。 じゃあ、バイトがんばって。 たまには生徒会の仕事しに来なよ」 「全力で拒否する。 しかし辞めん。じゃあな」 何のために籍を置いてるんだか…… いや、いつものやり取りだ。 今はイヴを追いかけないと。 しばらく歩くと―― 「怖いよぉ……」 お化けの出なさそうな、廊下の端で頭を抱えて座り込み、震えているイヴがいた。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1756人が本棚に入れています
本棚に追加