『それはプロローグ』

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冬は、嫌いだ。 寒いし、重ね着しないといけないし、動植物も四季で一番見れない季節だし。 雪景色や一面の銀世界は、たしかにキレイだし、神秘的だとも思うよ? けど、このプラス要素は、先に述べたマイナス要素をかき消すほどじゃあない。 物心ついた頃からそう思いながら、俺は16までを過ごしてきた。 けど、17歳の誕生日に、俺は一枚の"絵画"と出会って、冬に対する、新たなプラス要素を感じたんだけど…… それでも。 やっぱり―― 冬は、嫌いだ。 「じゃあ、行ってきます」 「はいはい~気を付けてね」 12月20日。もうすぐクリスマスでもあり、2学期が残り少なくもある、そんな日。 俺はいつも通り、玄関で母さんと定例の言葉を二三交わして、家を出た。 ……寒っ! 今年は例年にも増して冷え込むって、テレビでも言ってたけど、寒すぎないかな? 俺はそう思いつつ、赤と黒のチェック柄のマフラーと手袋をしっかりと装備し、歩き始めた。 俺は、神木 悠樹。 どこにでもいる平凡な、桜坂学園の高等部二年生だ。 まあ、あえて言うとしたら、父さんが少し大きな会社の社長ってことくらいかな。 別段、特筆するほど珍しいことではないはずだ。
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