『それは球技大会』

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イヴが転校してきた週の、ある日。 俺と知佳はその日も、2人で生徒会の業務をこなしていた。 ――俺は"とある理由"で、急ぎながら、ね。 その業務の中でも、俺たちが悩んでいたのは…… 「やっぱり、今回もバレーでいいんじゃない?」 「バレー、ね…… 体育館をそんなに長時間使えるかどうか、聞いてみないと。 それより、今確実に使えるって分かってる、運動場でできる競技はどうかしら?」 そう。球技大会で何をするか、だ。 まあ、毎年のことだけど、いろんな問題に頭を抱えていた。 その時…… 「ん……あーぁ……」 大きなあくびをしながら、黒川先生が生徒会室に入ってきた。 全く、不真面目極まりない先生だ。 これで教諭という役職に就けるんだから、世の中分からないな。 「珍しい……黒川先生が、こんな所においでになられるなんて」 「うっせー、稜宮。 俺だって好き好んで、こんな4階の果てまで来ねーよ……ったく」 「それで、なんですか?」 先生が、わざわざ生徒会室にまで来た理由。 それは―― 「あー、今回の球技大会は、テニスに決定だと」 「テニス……ですか?」 「また、何で……」 俺たちが最初に候補から消したのが、テニスだった。 何しろ、時間はかかるし、コートも何面も必要だし…… 球技大会には、とてもじゃないけど向いていない。
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