『それは球技大会』

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「なあ、稜宮」 「はい、何でしょう?」 今は6限目、黒川先生の数学の時間だ。 例によって、教卓にもたれるようにして椅子に腰掛ける黒川先生は、知佳を呼んだ。 授業中?そんなの、黒川先生には関係無いね。 最低限の授業もしないんだから。 「お前ら、7限目に練習すんのか?」 「ええ……というか、正式に組まれた授業なので、選択肢は無いかと思いますが」 「帰っていいか」 「もちろん。構いませんよ」 もう、誰もこの教師に文句を言う生徒はいなかった。 ――そして、そんなグダグダな授業が終わり、7限目。 俺たちは、高等部の敷地の外にある、桜坂学園共有グラウンドに来た。 1クラスに割り当てられたコートは、3面。 十分とは言い難いけど、他のクラスや中高大とテニスをする部活やサークルも使うんだ。 そう考えると、3面も使えるなんて、凄いことだよな。 「イヴはテニスの経験あるの?」 「うーん……ちょっとだけ、遊びでやったことはあるよー」 そう言いながら、イヴはラケットを振る。 ……お世辞にも、うまそうとは言えないな。 「よし、じゃあ俺と打とうか。 ついでに、レクチャーもしてあげるよ」 「うんー!ありがとうね」 と言うわけで、俺はイヴとラリーすることになった。 ちなみに硬球テニスなんだけど、学校の備品の割には、中々いいラケットだ。
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