『それは球技大会』

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「うん、なかなか狙ったボールは打てないよ。 まずは、ボールに慣れることから始めようか」 「うんー。よろしくね?」 「こちらこそ」 再び、俺からゆっくりとボールを打つ。 さっきよりも落ち着いて、イヴは腰を沈めてラケットを振った。 お……真っ直ぐに俺の方まで飛ばせた。 「やったぁ!」 「そうそう、そんな感じだよ」 ほぼ同じ球速で、打ち返す。 ……ん、さすがに2回連続は返せないか。 最初と同様、ボールは遥か彼方へ。 「イヴは、腕で球を打ってる感じだね。 腰を捻って打つんだよ。 重心を沈めて。そうしたら、ボールも安定してくるはずだから」 「こ、こうかなー。 うん、やってみるよー」 膝を曲げ、少し前屈みにイヴは構える。 構えは大分改善されたな。 俺が打ったボールを、イヴはキレイに返した。 ……今のアドバイスだけで、ここまで上達するなんて。 フォームも、最初とは別人。 滑らかで自然だ。 始まってから、まだ10分も経ってないのに。 これは、明らかに天賦の才だな。 と、俺が関心している、その時だった。 "ヤツ"が現れた。
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