『それは球技大会』

9/37
前へ
/340ページ
次へ
「ハァハァ……イヴちゃん、体操服も可愛いね……」 「あ、ありがとー……」 その危険な空気に、さすがのイヴも尻込みする。 そう、信二だ。 ヤツは、少しずつイヴに近付く。 危ない――! 「信二いぃぃぃッ!」 俺は高くボールを投げ、全身を駆使して、持てる力全てを発揮し、サーブを打った。 まるで、某物理法則を覆すテニス漫画の如く、あり得ない速度で、ボールが信二の顔面に直撃した。 「セントバーナードォォッ!」 何故か犬種のような悲鳴をあげながら、信二は吹っ飛んだ。 俺はすぐさまイヴに駆け寄った。 「イヴ!大丈夫だった!?」 「ゆ、ゆーきーっ!」 イヴはラケットを放り、抱きついてきた。 軽い、柔らかい、いい香りがする…… じゃなくて! 俺の強固なる理性が――! ――悠樹の脳内にある理性要塞―― 暗煙立ち込める、戦場。 そこに聳える巨大な要塞で、ある男が奮闘していた。 「貴様らッ!負け恥を晒すな! 気概と諦めない気持ちがあれば、我らに負け目は無い! 臆するな、ゆくぞ!」 「はい、軍曹殿!」 勇猛果敢にそう叫んだ彼――軍曹と部下たちは、圧倒的な兵力差のある敵に、挑んでいった。 が―― 「ぐあぁぁッ!」 「ぐ、軍曹殿ぉッ!」
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1756人が本棚に入れています
本棚に追加