『それは球技大会』

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「イ、イヴちゃん!俺も俺も!」 「キャッ」 俺から離れたイヴに、信二は息を荒くしてそう言った。 コイツ……性懲りもなく……! 「悠樹ッ!伏せろ!」 聞こえてきた、友の声。 俺はすぐさま屈んだ。 「ミョルニルァッ!」 再び顔面にボールがめり込み、信二は勢いよくぶっ飛んだ。 またマニアックな悲鳴だな…… 分かる人、俺の他にこのクラスにいるかな? 「ナイスボール、悟志」 「遅れてすまねぇ」 今の豪速球を見て分かるように、悟志もテニス部に所属していた。 実を言うと知佳もで、3人は部活で知り合ったんだ。 にしても、相変わらず恐ろしい球速と重さだな…… 「おい、信二……? 俺も随分丸くなったけどよ。 衰えたわけじゃないんだぜ……?」 倒れている信二の前で仁王立ちする悟志を見て、信二は「ヒッ!」と畏怖する。 「さとし、ありがとー」 「ん、信二がまたしでかしたら、すぐに呼んでくれ」 そう言い残し、悟志は隣のコートに戻った。 知佳と打ってたのか…… 「さ、イヴ。信二は放っておいて、俺たちも再開しようか」 「うんー!」 授業の終わりを告げるチャイムが響く。
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