『それは球技大会』

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「っしゃー!俄然燃えてきた!」 爽やかな見た目に反して、意外と熱血漢な悟志は、ブンブンとラケットを振り回す。 「じゃあ、私と打ちましょう、向井君。 悠樹君はイヴちゃんにレクチャーするんでしょ?」 「うん、そのつもり」 「そっか、なら決まりだな。 じゃあやるか」 2人はコートで先に打ち始めた。 「さて、と…… 俺たちも早速打とうか?」 「うんー!」 コートに入る前に、2、3説明をした。 飲み込みの早いイヴのことだ。 これくらいなら、易々と出来るようになるだろう。 「じゃあ、行くよ」 「うんー!」 俺はイヴの左側目掛けて、ゆっくりとボールを打った。 フォームが安定せず、空振り。 まあ、まだしょうがない。 再び打ち出す。 今度は、当たった。 けど、ボールは明後日の方向――正しくは、悟志の方に飛んでいった。 「!さと――」 「大丈夫だ」 俺が呼ぶ前に、悟志はそのボールを左手で、しかも素手で叩き落とし、知佳が打ってきたボールを返した。 す、すごい……振り返りもしなかった。 「さ、悟志ってすごいねー…… 私も頑張ったらあんなことできるかなー」 「いやー、流石にあれは無理だと思うよ?」 それにね、そんなことできる武道家でもない女の子ってどうなんだ?
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