『それは球技大会』

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「もちろん、そのつもりだったけど」 こんな時間だし、女の子1人で歩くなんて危ない。 送ってくのが当然だと思ったんだけど…… 「あ、ありがとう」 「どうしたの? いつもの知佳らしくないなー」 凛としていて、イレギュラーにも動じない。 それで、2人きりのときはエロ知佳さんに変貌する。 俺の知っている知佳は、そんな子だ。 「……私だって、驚くときには驚くし、恥ずかしいときには照れ隠しもするわよ」 知佳は俯きながらボソッと何か言ったけど、何を言っているかは分からなかった。 「え?何か言った?」 「なんでもないわ。 ほら、いきましょ」 そう言って顔をあげた知佳は、先ほどの顔でもエロ知佳の顔でもなく、平常時の凛とした表情をしていた。 ……うん、俺の勘違いだろう。 あの知佳が、恥ずかしがって顔を赤くしていたなんて。 「ただいま」 家についたときには、既に7時を過ぎていた。 知佳のお母さんには、何故かかなり気に入られててね…… 毎回、知佳の家にいくと、なかなか帰してくれないんだ。 「お帰りなさい、悠樹。 遅かったわね~」 イヴとはまた違った、のんびりとした口調で、母さんは俺を迎えてくれた。
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