『それは球技大会』

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「はい、もしもし」 『あ、悠樹?今家?』 「うん、そうだよ。 ちょうど帰ってきたとこ」 『……少し、会って話せない?』 ……こんな時間に? よっぽど大事な話なんだろうか? 「分かった。 今から食事だから、終わったらメールするよ」 『うん、ありがと。それじゃ……』 通話終了ボタンを押した俺の頭には、桜花の話したいことの予想が、微塵も浮かばなかった。 夕食後、メールで桜花に公園まで来てほしいと言われ、俺は外に出た。 その公園は、桜花と俺が、昔よく遊んだ公園だ。 2人の家からも近い。 しばらく歩くと、外灯に照らされた公園が見えてきた。 ベンチには先客……桜花の姿があった。 「早いね」 「あ、悠樹…… こんな時間にごめんね?」 「いいって。気にしないで」 どうしたんだ?桜花。 いつもより大人しいというか…… 「……それで、話って?」 「私たちが出会った頃のこと、覚えてる?」 "頃" といった言葉は、非常に曖昧だ。 それにも関わらず、俺の脳裏には、一瞬である出来事が浮かんだ。 「……もちろんだ」 「そう……」 それは、10年前……桜花と俺が出会った年のことだった。
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