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「そ、そんなはず無いっ!」
桜花は急に立ち上がって、全力で否定した。
「……私はね。
悠樹と話す機会が薄れてきて、初めて気が付いたことがあったの」
弱々しい表情で。
だけど、決して揺るがない瞳で、桜花は俺を見つめる。
「私には、おばあちゃんが必要だった。
大好きだった」
それは、痛いほど分かる。
あのときの桜花の混乱ぶりを知っているんだから。
「大切な人を無くす辛さ、怖さ、不安、焦り……私は分かっていた」
俺はしあわせ者だ。
その辛さを、きっと俺はまだ知らない。
「悠樹と話さなくなってね、私の心の中は、その全てが駆け巡ってた。
悠樹との距離が開くにつれて、胸が締め付けられるような苦しさが増したの」
「……桜花……」
言葉が見つからない。
俺は、そんなにも桜花のような辛さを感じただろうか?
最初こそ凄く寂しかったけど、悟志や知佳との、部活や生徒会での忙しくも充実した毎日に、そんな気持ちは薄れていった。
桜花は、ずっと苦しんでいたんだ……
「そんな時、転機が訪れたの」
「……イヴ、だよね?」
桜花は頷く。
イヴが桜坂に来て、桜花と俺の関係は、急変した。
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