1756人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけ悩み、年齢故に言い出せない、解決策の浮かばない俺たちの関係を、一瞬で変えたイヴ……
みんなの中でも、異質な存在ではあると思う。
「イヴには、本当に感謝してるよ?
それまで胸の中に渦巻いていたものが、あんなにも簡単に消え去るなんて、夢にも思ってなかった」
悲痛そうな表情で、「だけど」と桜花は言葉を続ける。
「すぐに新しい感情が芽生えた」
「新しい……感情?」
「新しい恐怖。新しい焦り……
私はね。きっと、イヴに悠樹を盗られるのが怖いんだよ……」
え……?
イヴに俺を盗られる?
「あまりにも醜い。
自分が一番分かってる。
けど、否定できないの……
私は、また悠樹を失うのが怖い」
「う、失うなんて……
それに、イヴに盗られる?
どういうこと?」
フッと口だけ小さく笑み、桜花はストンとベンチに腰を降ろした。
「相変わらず、ホントに鈍感だね」
「……わ、悪かったな」
「でも、そんな悠樹のことが……」
その揺れる瞳に、涙が溜まっていることに気づくとほぼ同時に――
桜花の唇が、俺の唇に触れた。
温かな……柔らかな感触。
唐突過ぎて理解の追い付かない俺の背中に手を回し、桜花はより一層強く、口付けをする。
最初のコメントを投稿しよう!