『それは球技大会』

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「……私は好きだよ」 ゆっくりと離れた桜花は、はっきりと告げた。 そのとき、何故か俺の頭には―― 『ゆーきー!』 桜花ではなく、あの金の髪が浮かんでいた。 「私と……付き合ってください」 さっきよりも潤んだ瞳は、真っ直ぐ俺の方を向いている。 俺は……どうなんだろうか? 桜花のことが好きなのか? ……違う。 友達として大好きなだけであって、そういった感情は持っていない。 だから…… 「……ごめん」 その言葉は、桜花の表情を壊してしまうには、十分すぎた。 目を伏せて、桜花は震える。 「……そっかぁ…… 私もね……?なんとなく……分かってたんだ……」 涙声で、途切れ途切れに桜花は言う。 「……やっぱり……イヴ……?」 「えっ……?」 さっきから、俺の頭に浮かんでいる女の子の名前を呼ばれて、思わず間抜けな声をあげてしまう。 「……図星?」 「俺が、イヴのことを好き……?」 桜花のときは、すぐに『違う』と思えたのに なんで、イヴには『違う』と思えないんだ……? でも、好きかと聞かれたら、イエスとは言えない。 それははっきりしている。 なら……どうして否定できない? 「……悠樹も心の整理ができてないんだね。 今まで恋したことないんでしょ?」
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