『それは球技大会』

28/37
前へ
/340ページ
次へ
「今日も天織さんは休み、か……」 窓から覗く、雲ひとつ無い青空を見ながら、知佳は呟いた。 今日は球技大会当日。 実行委員とテニス部、それにそれらを統率する生徒会――つまり俺と知佳は、早くに学校に来ていた。 ちょうど、天候による変更の心配はないと確認し終えたところだ。 「じゃあ、俺たちはこれで」 「ええ、ご苦労様」 生徒会室を出ていったテニス部部長の挨拶を境に、2人きりになった俺と知佳の間に、妙な空気が流れる。 「――さて、と。 あれからなかなか2人きりになれなかったからね。 悠樹君、話してもらえないかしら」 扉の鍵をしめ、知佳は真剣な表情でパイプ椅子に腰を降ろす。 「……何を?」 「決まっているでしょう? 天織さんのことよ」 言葉に、詰まる。 そっか……病欠じゃないって分かってたのか。 それに、俺が関係してるってことも。 だけど……さて、どうしよう。 こんなこと、言うべきじゃないよな…… 「……フったみたいね」 「え?」 俺の悩みを、一撃で粉砕する言葉。 ここまでお見通しだとは…… 「何、すっとんきょうな声をあげてるの? 多分、悟志君もずっと前から天織さんの気持ちに気付いてたわよ」
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1756人が本棚に入れています
本棚に追加