『それは球技大会』

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「……!」 そう……だよな。 うん、きっとそうなんだろう。 拒否された挙げ句、冷たくされるなんて二重に辛いだろうって考えてたけど、それは返って桜花の為にならない。 「……そうだね、ありがとう。 俺は、桜花にとても残酷なことをしてしまうところだった」 「大丈夫よ。 どんな断り方をしたのかは知らないけど、悠樹君に悪気が無かったことくらい、天織さんは分かってくれるわ」 柔和な笑みを湛え、知佳は俺から離れた。 「……はい!この話はおしまい。 私が言えるのはここまでだわ」 チラリと時計を見ると、ちょうどいい時間だった。 「ところで、イヴちゃんの成長具合はどうなの?」 実は、知佳はここ数日、家庭の事情で放課後時間が作れず、イヴの家で練習出来ていなかった。 「まあ、今日分かるさ。 ただ、度肝を抜かれると思うよ」 「あら?期待させてくれる物言いだけど、大丈夫なのかしら?」 「ああ、その期待以上を見れるよ」 自信満々に、俺は胸を張った。 それくらい、イヴの成長は目覚ましい。 「珍しいわね…… 悠樹君がそこまで断言するなんて」 「それくらい、イヴの力と努力を信頼してるってことさ」 顎に手をやり、「信頼、ね……」と呟く知佳。 何が引っ掛かるって言うんだ?
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