『それは球技大会』

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「……おーか」 優しく。優しく名前を呼んだイヴは、桜花に抱き着いた。 突然のことに、俺たち以外の客も驚く。 「イ、イヴ……?」 「ごめんね……気付いてあげられなくて。 辛かったよね……」 その目には、涙が溜まっていた。 まるで、桜花の代わりであるかのように。 やめてくれ…… それなら、謝らないといけないのは、俺のはずだ。 俺が不器用な断り方をしたから、桜花を傷つけた。 俺がみんなに言わなかったから、みんなはどうすることもできなかった。 俺が、悪かっ―― 思わず目を背けていた俺の背中から、いつの間にか桜花から離れていたイヴが抱き着く。 「……ゆーきも辛かったよね。 ごめんね……」 え……? なんで? なんでイヴが俺に謝るんだ? 「私……やっぱりダメだなぁ。 初めて見たとき、2人がケンカしてるって思ったけど、間違いだったんだねー……」 それは……本当に、単に時間が産んでしまった溝なんだ。 イヴが気にかける必要なんてないんだ。 「2人を……助けられなかった……」 「「ち、違う!」」 俺と桜花は、ハモりながら否定した。 「イヴは、私と悠樹の仲を戻してくれた。 悠樹に告白できたのは、イヴがいてくれたからだよ。 イヴには、助けられたんだよ……」
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