『それは(きっと)デート』

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「おや、お困りのご様子ですな」 「あれー?アルベルト、どうしたのー?」 不自然に路地に現れたのは、いつもの紳士服姿のアルベルトさん。 手には、ゴツいアタッシュケースが。 「ど、どうしたんですか?それ」 「ほほほ……まあ、先にご挨拶をさせてください、悠樹様」 そう言って、アルベルトさんは律儀に信二にお辞儀をした。 「初めまして、一ノ瀬様。 私、イヴァレンス様の御家に仕えておりますアルベルトと申します。 今日は、あなた様の為に、老体に鞭打って出向いて参りました」 「む、鞭!? それは大変だったでしょうに……」 おいおい……さすがは信二。 鞭をそのままの意味で取ったか。 しっかし、アルベルトさん、一体信二なんかに何の用だ? 「お心遣い、痛み入ります。 さて、皆様登校中なので、時間はありませんね。 なので、単刀直入に申し上げます」 アルベルトさんは、ビシッと信二のチケットを指差した。 「そのチケットを、お譲りいただけませんか?」 「な……っ! そんなこと、するわけが……」 「勿論、タダでとは言いません」 その仰々しく黒光りするアタッシュケースが、開かれた。 中におさめられていたのは―― 「こ、これは……! かのエロゲー界屈指の名作、『幼なじみと や ら な い か ?』じゃないか!」 ………… 空気が死んだ。
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