『それは(きっと)デート』

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桜坂駅まで、徒歩15分。 さらに電車に揺られること30分。 俺たちの目の前に、広大な遊園地が広がっていた。 「うわぁー……!」 電車の中からも見えていた、巨大な観覧車に、イヴは目を輝かせる。 「ゆーきゆーき!あれ!あれ乗ろーね!」 「はいはい、分かってる分かってる」 「やったぁ!」 無邪気に跳び跳ねるイヴに癒されながら、俺はチケットを取り出した。 実は、これは先行開園のチケットという貴重なものだ。 だからこそ、信二も入手に手こずったんだろう。 「はい、お二人様ですね」 入り口でチケットと引き換えにパンフレットをもらい、俺たちは遊園地に入った。 先行開園だからか、某人気遊園地のように、蜂の子を散らしたような大人数の客はいない。 人混みが少し苦手な俺には、ちょうどいいな。 「ゆーき」 そっと、イヴが俺の腕に抱きついてきた。 いつものように、強引にではないその抱きつきに、かなりキュンとした。 「イ、イヴ……!」 「んー?なぁに?」 極上の微笑みは、俺の口の中の言葉を、一瞬にして溶かしてしまった。 ……まあ、いいや。 たしかに恥ずかしいけど、カップルのようで自然ではあるずだ。 それに、こんな可愛い子と仲良く歩けるなんて、幸せだしね。
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