『それは(きっと)デート』

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チュンチュンと小鳥の囀(さえ)ずる声が、客を招く。 そこでは、入口でマスコットのハムレットちゃんが子どもとじゃれていた。 「わぁーっ!」 「あっ、イヴ!」 目を輝かせて、小さな子に紛れてイヴもハムレットちゃんとじゃれ始めた。 ……やれやれ、あれで違和感が無いんだからすごいな。 そういや、着ぐるみって、かなり大変らしいな…… バイト代が良かったからやってみたら、泣きを見たって悟志が言ってた。 「ほらほらー!ゆーき、ハムレットちゃん可愛いよー」 保護者のような心境で、少し距離を置いてイヴを見ていると、いきなり手を引かれた。 イ、イヴってこんなに華奢なのに、力むちゃくちゃ強いな…… 「ね?可愛いでしょ?」 そうやってニッコリ微笑むイヴの方が可愛いと思うよ、うん。 しばらくハムレットちゃんと戯れ、ハムレットちゃんの森を回った俺たちは、出口付近にあるぬいぐるみ売り場に着いた。 「わぁーっ!」 「そういえば、イヴの部屋はぬいぐるみがいっぱいあったね。 好きなの?」 「うん!大好きだよー」 そう言いながら、イヴはハムレットちゃんの恋人の、オフィーリアちゃんのぬいぐるみに抱きつく。 こらこら、商品だよ。 ……なんて、こんな幸せそうな顔してたら言えないな。
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