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「きゃあっ! 虎ちゃん! どうしちゃったの??」
って、テンション高く抱き締められて、柔らかいその人を抱き返す。
「ただいま。相楽の母さん」
以前より少しふくよかになった。でもそれが優しい彼女にとても良く似合っていて。
「うん。うん。お帰りなさい」
ぽんぽんと背中を優しく叩かれ、暖かい体温が離れる。
そして顔を上げた先に、義母が居た。
蒼白な顔。
化け物を見る様に僕を見つめてた。
彼女は変わらない。
その冷たい態度も、僕を映す瞳も。
僕を全身で拒否しているのが見て取れる。
「……お帰りなさい。虎之介さん」
いつも着物をきちんと着た義母。
「ただいま。義母さん」
目を伏せた義母はすぐに踵を返し、部屋に引っ込んだ。
相楽の母さんが一度僕にほほ笑んで、その後を追って行った。
「虎之介。さあ、入ろう」
大輝の暖かい手が背中を押してくれて、
「そうそう。兄さん、部屋はそのままにしてるからね。そこに大輝兄さんと泊まってね」
にっこりと笑う千早が手を引いてくれた。
その横に立つ大陽は僕の荷物を大輝から受け取って、
「いつも仲良い兄さん達は俺らの憧れだからさ。“二番目”に、だけどね」
一瞬凍り付いていた空気がやわらいで、和やかに会話を続ける三人。
そうだね。
僕は千早と大陽の為に帰って来たんだから。
気にしない。
「“一番”は相楽の両親よね。で、よく判らないのが私の両親」
さらりと笑って言う千早。
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