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「晶さん、さっきからボーッとしてますけど、大丈夫ですか?」
「ごめんね、久しぶりにカッコイイ人と一緒だからドキドキしちゃって」
「えー!そんな、俺、全然カッコ良くなんてないですって!もう、晶さんは褒め上手ですねー!」
正直な気持ちを伝えると、彼は恥ずかしそうに鼻をポリポリとかいた。本当に照れているのか、耳まで赤くなっているのが分かった。外見はワイルドに見えるのに、意外とシャイなのかもしれない。
そんな姿は可愛く見えて、つい声を出して笑ってしまった。
「耳まで赤くなってる」
「ちょ、観察するのやめて下さいよ!恥ずかしいじゃないですか!」
彼はもうっと、わざと頬を膨らませ、両手で耳を覆い隠した。もっとからかいたくなってしまい、今度は私から顔を覗き込む。
すると、彼は少し茶色がかった瞳を顔の中心部に寄せて、面白い顔をして見せた。
「あははは!」
その姿を見た私は思わず吹き出し、大きな声で笑い出す。私の笑いにつられた彼も、ハッハッハとお腹に手をやりながら笑いだした。
朝5時過ぎの歌舞伎町の一角で、まるで高校生のように互いに笑い続けた。
これから始まるであろう彼との関係は良いものになると感じた。
まだ朝の早い9月の初め。陽の光が歌舞伎町を浄化するように照らし始めていた。
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