《偽善者の悪意》

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有無を言わせぬ展開。 こちらはまだ弟にとっての切り札、兄の存在すら出していない。 勝手に想像しとるやろうけど… 更に話しを詰める。 『通帳持って来い‥通帳…』 『えっ?』 『えっ?やあるかい!金が振り込まれた谷口名義の通帳があるやろがっ』 『あっ…』 『それは嫁が…』 富子共犯確定…♪ 『なんで嫁さんが持ってるんや!』 『お前が谷口の名前騙って借りたんちゃうんか』 はなから富子が主犯だと分かっている。 しかしその情報源が坂田兄と言うよりも夫と言った方が富子には効果がある。 富子からすれば夫は共犯、その夫が口を割ったとなれば全てがバレたと勝手に想像する。 その想像からの方が話しを詰めやすいからだ。 『あっ…』 動揺の色が更に濃くなる。 夫からすれば自分の証言で富子の関連を裏付けてしまった事になる。 考える暇を与えずまくし立てた結果だ。 アホ夫婦やな…
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