《黒服の紳士》

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反応が無い。 耳悪いんかな… 『あの…』 少し近づきもう一度声を掛けてみる。 『はいはい‥聞こえてますよ』 こちらに振り向き洗濯機のすぐ横にある縁側に座り込む。 口調、立ち居振る舞いがザ・ご年配と言う感じ。 のんびりしよるな… 70くらいかな… 『克司さんいてはる?』 『まだ寝とるよ』 ほな在宅か… 『呼んでも返事なかったんよ』 『そうか…』 と言い立ち上がる母親。 『ちょっと見てくる…』 母屋に向かって歩いて行く母親の背を見ながら縁側に腰を下ろした。 小さいお婆ちゃんや… それにしても凄いな… 木と木の間に工事用ロ―プを張り巡らし洗濯物を干している。 朝から何回洗濯機回したんやろ… たいして考える事も無くボ―っとタバコを吹かしていると母親がゆっくり戻ってきた。 『もうすぐ降りて来ますよ』 と言いながら私の横にちょこんと腰を下ろす。 あかん‥無駄に和む…
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