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奇しくも、バレンに落とされた時と同じ状態になってしまった訳だ。
「……………………」
何もすることがなく、ただ何もせずに天井の木の模様を見る。
少しだけ肌寒い空気から守るため、薄い毛布のような掛け布団で体を覆いながら、何も考えていない頭でふと、そんなことを思った。
「…こんなに何にもしないで何にも考えない時間って…いつぶりなんだろ」
色々なものに急かされ、鬼であるという状況から、心が休まる時など無かった。
ルーさん達と出会ってからも心配の連続で、ゆとりはできたが、やはり常に気疲れしていたと言っても過言ではなかった。
これほどまでに何もせず、何も考えないでいる状態。
もしかしたら、初めてのことかも知れない。
「………………」
そう思うと、今の状況というのも悪くないかも知れない。
明日の朝には起きるから。
今晩だけ、この夢みたいな状況を感じさせてはくれないか。
「…………」
知らないうちに、瞼が閉じていたらしい。
自分でも気が付かないほどすんなりと、俺は夢の世界へ旅立っていた。
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