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「ハァ…ハァ…くそっ…」
建物の物陰に隠れ、数瞬前まで俺がいた通路を鉛玉が飛び交っている様を眺める。
あと一瞬ここに隠れるのが遅ければ、比喩表現でなく実際に蜂の巣になっていただろう。
血の滲む左腕を気にしながら、右手に握るゴツゴツとした拳銃を確認する。
残弾は13。果たしてこれだけで、何人いるかもわからない敵から逃れることができるのだろうか。
「くそ…やるしかないってのに…」
痺れているのか、左腕の痛みは無い。
逆に右手の感覚も無い。
名も知らない愛用の拳銃を握っている感覚は、右手に無い。
「落ち着け…大丈夫…大丈夫だ…」
鉛玉の嵐がおさまらない通路から目を逸らさずに、自己暗示のように呟く。
「ここを抜ければ…後は───」
その瞬間。
頬に、何かを押し付けられた。
驚きながらも体は動かさず、目だけをその方向に向ける。
髪も、サングラスも、スーツも、肌まで全身を黒で覆っている男が、黒光する拳銃を俺の頬に当てていた。
まずい───
────見つかった。
‐
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