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「………ん?」
緊迫感の残る頭のせいでぼやける視界が落ち着いてくると、運転席で馬の綱を持っているプルーストの姿がはっきりしてきた。
しかし、そこに座っている、見た目は少女だか男性的に感じるその子を、俺はプルーストだと思えなかった。
雰囲気、というものもあるのかも知れないが、もっと直接的に見た目が違う。
プルーストは髪を左分けにしていた。
ミロは花飾りをしていた。
別にその日の気分で髪型くらい変えるのかもしれないが。
正面にいる少女は、前髪をかきあげて小さな額を露わにしていたのだ。
「できれば、眠っていられるだけ眠っていて欲しかったんじゃか…起こしてしまって悪かったのう」
いや、やっぱり曖昧な雰囲気とか微々たる見た目の変化より。
喋り方がおかしいんですけど。
「……あんた…誰だ?」
「おぉ、真っ当な反応じゃのう。何、そんなに怖い顔をせんでも大丈夫じゃよ」
おかしな喋り方をする目の前の少女は、よく見るとプルーストと若干違う笑顔で言った。
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