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‘昔のことをどれくらい憶えているか’
この質問は、俺にとって困難なものでしかなかった。
そもそも、質問の仕方が適当過ぎて好きではない。適当なつもりは無いのかも知れないが、漠然とし過ぎているじゃないか。
砂漠の真ん中で「ここどこ?」なんて聞いてくる奴はいないだろう。
答えなんか返せる訳が無い。
それが分かり切っているのだから、質問などされる訳が無い。それでもそんな質問をしてくるような時は、皮肉か戯言か。どちらにしても、良い意味合いで使われていることではないだろう。
それなら、俺へ向けられるその質問は、皮肉か戯言か、はたまた罵倒だったのだろうか。
たった16文字しかないその言葉の中に、漠然とした曖昧さが3つも隠れている。
昔の定義が分からない。
何年も前のことなのか。それとも昨日の事なのか。それらを全て含んだ過ぎ去った時間のコトなのか。それすらをひっくるめた、自身の誕生それ以前のことなのか。
どれくらいの定義が分からない。
存在する全ての、どこからどこまでがどれくらいなのか。そもそもどれとは何の量なのか。くらいとはどんな単位なのか。全ての事はどれではないのか。0とはどれの量に含まれるのか。
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