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やっぱり曖昧。抽象的な昔の俺は、漠然としていた。
だからこそ、今の自分が‘昔をどれくらい憶えているか思い出そうとする’と、必ず思う。
・・ ・・・・
ああ、俺らしいと。
その記憶の存在自体が、昔の俺そのままじゃないか、と。
では、今の俺はどうなのだろうか。
昔のように周りに合わせることは放棄し、昔のように普通にこだわることは消去し、昔のように悟っていた現実は容認し、昔のように漠然とした自分は否定し、昔のように曖昧な思考は模索し、昔のように作っていた溝は埋葬し、昔には無かった人間関係ができた。
今さら俺にその質問をする人間はいないかもしれないが、もしそれが起こり得ることがあるならば、胸を張って応えよう。
考えることに意味なんか無いと。
今を満足しながら生きていけば、過去を振り返ることに意味なんか無いと。
今の自分は、到底満足できる者ではないけれど。
昔よりは確実に、今が満足できるからそう応えるつもりだ。
そんな俺を、昔の俺が見たら何と言うだろう。
自分のことだからおそらく分かる。過去の自分から今の自分へ向けて言うならば。
俺らしくないな、だろう。
それでいい。
それがいい。
そうでなければ、今を満足していないことになってしまう。だから間違ってはいないはずだ。
そして、あわよくば、今の自分から、未来の今を満足している自分を見て、こう言えることを望む。
────まったく、俺らしいよ。
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