1~restart~

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太陽と共に起床する。 それができる人間を、俺は尊敬する。日が昇ったタイミングで目を醒ますとは、一体どういうメカニズムなんだろうか。 それが、今日の第一の思考だった。 起きて、ベッドから這い出して、部屋の窓から見える太陽が既に結構高い位置にいる様子を見て、何の気もなくそう思ったのだ。 そんな、別にする必要のない思考、したからと言って何の得にもならない思考は、以前では全く無かった。いや、無かったと断言できるだけはっきりと思い出せる訳ではないけれど、少なくとも朝一番にしたことは無かった。 朝には必ず、まず真っ先に、鏡の前に立った時にしていた思考があったからだ。 窓の外ばかり眺めていても何にもならない。いつの間にか身についていた生活習慣に逆らう事無く、ペタペタとスリッパの音を奏でながら、洗顔のため鏡の前に移動した。 「毎朝思うが…変な顔だよ…」 鏡の中からこちらを覗きこんでいる男は、寝起きなのだろう情けない顔をしていた。髪は長くもなく短くもなく、鼻が高い。その割にはイケている顔とは言い難い顔立ち。不自然に鼻が高過ぎるのが問題なのかも知れない。 そして鏡の中の男には、通常人間の耳がある位置に、人間のモノとは言えない獣耳が生えていた。               ‐
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