序章

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突然だが、『死神』といわれ思い浮かべるのは、どんな姿だろうか。 全身を覆う黒衣に髑髏の顔、その手に持つのは、身の丈ほどの巨大な鎌。 とまあ、だいたいこんな感じだろう。 そうじゃない姿を思い浮かべる人は、捻くれた思考の持ち主か、奇抜な発想の者だ。 とりあえず、その多くの人が思い浮かべたであろう姿そのものが今、俺の目の前に居た。 しかも宙に浮くというオプションつきでだ。 さて、こんな状況に陥った人は皆、恐らくこう言うだろう。 「……ああ、夢か」 例に習いそう言った俺は、首元にチクリとした痛みを感じた。 そちらへと視線を向ければ鎌が首に当てがわれ、薄く切られたのであろう、そこからは一筋の血が流れている。 「夢かどうか、この鎌で試してやろうか?」 髑髏から発されたのは低く掠れた声。 突き付けられた鎌は紛れも無い本物だと言うことを痛みが証明する。 「問う。貴様が河井創か」 「あ、ああ」 元から試す気は無かったのだろう、返事をする間も無く、鎌は首から離され、 次いで聞かれた問いに条件反射のように答える俺、その時初めて自分の声が震えていることに気付いた。 そんな声の震えも死神にすれば関係無かったのだろう。 大して気にした様子も無く死神は納得したように声を出す。 「そうか、ならば貴様に――」 ゆっくりと響く死神の声、一つ一つが鼓膜に焼き付くような錯覚すら感じるその声は、そこで一瞬。ほんの一瞬、止まり。 「死の宣告をする。」 そう、告げた。  
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