第一章

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「とは言え、すぐに殺すわけでもないわ」 「……へっ?」 いきなり言われた少女の言葉に、俺は間抜けな声しか出なかった。 「アンタは、一学年進級する前日、つまり始業式を迎える前日に命を落とすことになっているの。ちなみに死因は不明になる予定よ」 衝撃の告白を躊躇うことなく次々とする少女。 「さっき言った死神になる試験。その内容が、一年以内に死ぬことが決められた人間に死の宣告をして、その人間に恋繋ぎをさせることなの」 「恋繋ぎ?」 あまりにもめちゃくちゃな内容に唖然としていた俺だったが、不意に出てきた知らない単語を、これまた無意識の内に声に出していた。 「恋繋ぎってのは、人と人を恋仲にすることよ」 「……なんでそんなことをさせるんだ?」 もう、半分開き直り、疑問に思ったことは全部聞くことにした俺の質問に、嫌がる様子無く彼女は答えていく。 「ただ殺すだけではいずれ命は途絶えてしまう。 だから死神は殺す前に恋繋ぎをさせるらしいわ」 「でも、どうせ死ぬと分かってて、そんなめんどくさいことするもんか?」 死ぬと分かったら何もやる気が起きなくなるんじゃあ、 と思い説明に口を出す俺だったが、彼女は俺の疑問に頷きながらも説明を続ける。 「普通はしないでしょうね。ただ、報酬があるとすればどうかしら? それも、五つの恋を繋ぐ毎に一つ願いが叶うという素晴らしい報酬だったら」 そこまで言われて、まさか。と一つの想像をする。 そして俺が何を想像したのか勘付いたのだろう、小さく笑みを浮かべ少女は言う。 「そう、恋繋ぎをすれば死から逃れることだって叶うのよ」 俺の予想は見事に的中した。
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