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「なるほどね……。オーケー、理解した」
「そう、飲み込みが早くて助かるわ」
頭の中で情報を整理すれば、俺がするべきことは明確に示されていた。
恋繋ぎをする。
そうすれば死なずに助かる可能性がある上に、うまくいけば願いを叶えることさえも出来る。
死ぬ前の悪あがきには調度いい条件だ。
「確かにそれなら恋繋ぎとやらをするしかないわな、デメリットもねぇし」
「そう言うってことは、してくれるのね?」
ため息と共にそう言うと、少女はキラキラと背景に星が見えるような、期待に溢れた笑みを俺に向ける。
その笑顔にやや押されながら俺は言いたいことがあるのを思い出す。
「あ、ああ、そうするつもりだが、最後に一つ。死神だと言うことを証明してくれないか?」
「……えっ?」
頭の左右で束ねられた髪は刃を思わせる白銀、それは背の中程まで緩やかに流れ、
白銀に包まれた肌は、鋭さとは無縁の、陶磁や雪の如き柔らかき白をしていて。
そんな白の中、大きなややつり気味の瞳だけが、血の様に深く紅い艶やかな光を放っている。
そんな、神秘的な美しさを持つ少女なのだが。
俺の言葉に対し、今のようにキョトンとしたり笑ったりと、表情や仕草のひとつひとつが実に人間くさく、
以前の黒衣姿や、今の見た目と相成って、俺を惑わしていた。
「別に死神にしか出来ないことじゃ無くても、人間には出来ないことをしてくれればいいんだ、ほらさっきみたいに宙に浮くとか」
そのぐちゃぐちゃになった状況から抜け出るために、自分が納得いくであろう条件を出してみる。
……なんだかこの時点でおかしなことになっている気がするが気にしない。
そんなことを考えていると少女は、やや視線を泳がした後、怖ず怖ずといったようにこちらを見る。
「その……、死神見習いは死の宣告と共に能力が制限されるのよ、鎌や黒衣の顕現、能力の譲渡程度なら出来るけどそれでいい?」
さてさて、また聞き慣れない単語が出て来たよ。
そう思いながら、深いため息をついていた。
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