静寂

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鍾乳洞。 長く入りくんだ道の先。 茜に染まる裂け目へ降る風は、 濁った泉を波立たせる。 響くはずの彼の寝息も、 頭上の声にかきけされる。 多くの、死に。 昔、この上で戦いがあった。 単なる領地争いだ。 ただ、どちらの国も多くの犠牲者をだした。 それ以来ここに攻め込む国はなくなり、こちらも戦争を避けることで国は落ち着いた。 大地に染み込んだ血は、断末魔を記憶していた。 惨劇を人々の記憶から消さないように。 だが、平和とは従属だ。 誰もが満足してはいられない。 あるものが水面を叩けば波紋が瞬く間に拡がる。 だから、この世に安住の地など在りはしない。 泉は透き通り、鎮まり、 寝息はやんだ━━━━━。
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