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そして、山のように大きく広大な城を埋める数千の民を押し退け、
民は見知らぬ彼の挙動に注目した。
先ほどの兵士の息を飲む音が聞こえた。
彼は王に問いを投げ掛け、場は静寂に包まれた。
「行いを…悔いているか。」
王は顔を起こし、
「悔いてはいないな。」
自信に満ちた表情だった。
「ただ、誰にも理解を得られなかったことを悔いている」
「…」
「いや、…なにより我が子の未来を潰してしまったことを…」
王は目を背けた。
独裁者の強い眼差しは慣れない父の瞳へと変わっていた。
「根絶やしだろうな。」
「強く、悔いている。」
語調を強くする王に、
民衆の一部には迷いが浮かんだ。
「同情する。だが、勘違いはするな。お前は明日死ぬ。しかし、その子に罪はない。父としてのお前に訊く、我が子と共に逝くか、それとも我が子の新たな人生を見送るか。どちらがいい。」
周りを見渡した。所々から怒りと不安の声があがったが、
「共に逝きたい。やはりその方が幸せだ。」
旅人は笑った。
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