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兄上様達が宴の席で気をもんでおられた頃、巴様は自室にて怒りながらもうれしそうでございました。
「あの行いはあまりに無礼だとは思わないか?湖東。」
「あ、はい。あ、でも姫様も酷どうございます。義仲様に噛みつかれるとは・・・。」
「あれくらいは、当然じゃ。」
巴様は怒りながらも、兼遠様からの小袖に着替えておりました。怒りながらも負けたことがうれしいように見えました。
「姫様・・・お似合いにございます。」
幼き頃より、野山を駆け回り、兄上様たちと同様の狩衣姿ばかりしていた姫様が、小袖姿になるとは、とても思いませんでした。身びいきにあらず、それは、それはとても、お綺麗で、都人に決して負けぬ姫ぶりでございます。
「これでは、都の歌姫にも負けませぬ。」
「湖東、誉めすぎじゃ。」
「いいえ、私も都人は何度もみたことがございます。ですが、今日の姫様に敵う者なでおりません。」
本当に、私が見ほれるほどにございました。
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